視点を変える。結構考え方としては有名だけど実際にそれができる人ってどれくらいいるだろう。僕はこう思っているけど、今読んでいるあなたはそんなことないかもしれません。
ある種、今のような視点の変更は呼ばれ方としては”マジョリティ”に対する”マイノリティ”、”王道”に対する”邪道”など、よく思われていないことがあります。そんなときにいい単語があります。
アンチ…もともとはAntipathy。sympathyの対義語で、反感を指す。転じてAnti”アンチ”のみで「反~」「対~」と使われる。
ということで、ここはその”アンチ”に焦点を絞ったゲームがめでたく再販されるので、少しまとめてみたい。ちなみに、筆者は未プレイだがやりたいゲームとしてずっとストックされており、今回の再販はものすごく嬉しいです。
「moon」オニオンゲームズ(ラブデリック社)
と、いうことで今回書きたいのがこのmoonというゲーム。詳細は以下。
moon
メーカー: Onion Games
http://oniongames.jp/moon/
対応機種: Switch
ジャンル: RPG
配信日: 2019年10月10日
価格: 1,980円(税込)
公式サイトも上記リンクから飛べますが、面白いのがそのジャンル。冒頭でも触れた通り、メディアではよく”アンチRPG”という聞き慣れないジャンルで取り上げられますが、その理由は後述します。
…導入として、僕がこのゲームを知ったのはよくあるゲームスレのまとめ記事。「EDが秀逸なゲームスレ」みたいなので見た記憶がありますが、とどのつまりEDが秀逸なタイトルを徒然と記載されているものです。
その中でよく聞く名作タイトルに並んで記載されていたのが、moonというこのタイトル。ネタバレと知りながらも、知らないタイトルを見た僕はネタバレを探して見てしまいます。
ネタバレって通常、見たくない人/見たい人で論争が行われるほどのシビアな部分だと思っていますが、見たくない派の理由としては”やる気が無くなる”、”やってる意味がなくなる”ということが主だと思います。僕もその気持がある一方で、そのEDに自力でたどり着きたいと思うこと、つまり追体験したいと思うことがあります。
moonというゲームではまさにその現象が起きて。今回は僕目線で記事を書いてしまうのでそのことも触れてしまいますが、システム面でも強烈なゲームです。それからちょこっと触れていこうと思います。
①RPGで倒したモンスターのことを覚えていますか?
RPGゲームといえば、ドラクエやFFのようなものをイメージするかと思いますが、道中どうしてもレベルが足りず、近場で一番強い敵をボコボコにして経験値という謎のパラメータを稼ぐゲームでもあります。よくわからないけど、経験値をいっぱいくれるから倒す。それだけの理由で倒されていったモンスターたちのことを考えたことがあるでしょうか?
物語はそういった”倒されていったモンスターたち(=アニマル)”のことを救っていき、救ったときにくれるラブを集めていくお話です。
と、ここまで言われてハッとする人も少なくないんじゃないでしょうか。かく言う僕もその一人で。ポケモンなんかでも、ジムリーダーを倒せるレベルが足りない…とりあえずそこらへんのポケモンを狩るか、なんていうこともよくあったりします。…と同時にこのゲームを知ってから、”そこらへんに倒されたポケモンたちの山があるんじゃないか?”とも思います。
このゲームは冒頭、それこそ王道RPGのゲームをゲームインゲームで行うことになります。その名も”FAKE MOON”。先程の勇者のようなゲームかな?と思わせ名前を入力していくのですが、途中でお母さんにゲームをとめられます。
そんな中テレビに吸い込まれ、ゲーム本編である”REAL MOON”編が始まります。ゲームの中身に関しては冒頭に触れた通りやったことないので楽しんでいきたいのですが、導入部分だけでもなるほどと思える作り方です。
②市場価格の高騰、プレミア化
と、いう斬新なシステム・前述の奇策なEDのおかげもあって”知る人ぞ知る名作ゲーム”という評価がされていたこのゲームですが、実は当初はプレイステーション(1)で出ていた作品。22年前、つまり1997年に出ました。
当時ラブデリックという会社が開発、アスキーから販売されていましたが、このゲームの発売後ラブデリック社が解散。解散というよりか、様々なゲーム会社へと独立していくことになります。そこらへんはwikipediaで是非どうぞ。そういう訳合って、非常に権利関係がややこしいゲームとなってしまっているのも事実です。
ゲームはだいたい開発元と販売元が分かれているパターンが多くて。ポケモンなんかがわかりやすいのですが、販売元は任天堂のゲームですが、開発しているのはゲームフリークだったり。
そんな形で、moonでも開発元はラブデリック・販売元がアスキー、プラットフォームはプレイステーションという形で販売されていました。この時点でもなかなか厄介。ただ、先述の通りラブデリック社は解散。アスキー社は2002年にゲームの事業を廃止、その後KADOKAWA社へと買収されていくことになります。
そのため9/5の放映されたニンテンドーダイレクトでは、著作権画面にKADOKAWAの文字があったわけですね。ちなみにRoute24という会社は元ラブデリックの西さんが立ち上げた開発スタジオのようなもの。細かな用語が多く難しいですが、とかくいろいろな形で権利関係が絡み合っています。
そうしたおかげ…もとい、大人の事情もあってか、名作ゲームと謳われていた中でもリメイク・復刻がまったくなかったゲームになります。1997年に発売(廉価版が1998年)したあとは特になにも追加もなく、やりたいと思う人は増える一方で決まりきった在庫しかないため、価格が猛烈に高騰していることが有名になっていました。
今でも新品はこの値段で取引されていたりと、法外な値段がつけられていることもしばしば。もっとも中古ソフトだと5000円くらいなので買えなくはないのですが、それでも高い。
そんな中、任天堂ががんばってくれたのか、moonの人たちががんばってくれたのか。とにかくいろいろな人のラブがあってめでたくスイッチで復刻される運びとなりました。バックボーンはちょっと知っていただけですけど、本当に自分のことのように嬉しくなりました。
③(ネタバレ)アンチテーゼのED
※ネタバレです。逆に僕はこれを見てやりたいとなったおかしいやつなのですが、嫌な方はそっ閉じ推奨。
さて、冒頭から僕が本当にゾクッとしたということで挙げ続けてきているのがこのED。①でも触れたように、ラブを集めていくんですが、最終的にはそのラブを集め、光の扉をあけることが使命になります。
光の扉は月にあるのですが、ラブを集めて月へ向かうと、月の女王に出会います。
…もし、おまえがレベルではあらわせないほどのラブをもっているのなら…
…奇盤に記された内容さえ変えてしまう事ができるのではないでしょうか…
扉を開けて○○…
そうして、光の扉を開けるべく扉に手を当てるプレイヤー。だが扉は開かず、ロケットに忍び込んでいた暴虐の限りを尽くす勇者が降り立ちます。(という書き方をしていますが、実際は悪い竜を倒すため、正義を貫いているだけ+装備でそういう行動をさせられているだけだそうです)復活させたアニマルたちは再度殺されてしまい、月の女王も。最後にはプレイヤーも…。なすすべなく殺されてしまいます。
すると現れるのがこの画面。プレイヤーは「ラブを集めたけど、まだ足りてないのかな?」や、「イベントが回収できていないのかな?」なんてことを考えるかもしれません。そうしたプレイヤーがみんな、YESを選んで戻ってきてしまいます。これは間違い。
月の女王に言われたことを思い出しましょう。「扉を開けて。」光の扉意外にももうひとつ、開くべき扉はそこにあります。
…僕はこの選択肢にひどく衝撃を受けました。というより、今でもこの画像で鳥肌が立ちます。早くやりたい。とはいえこの選択肢は賛否両論で。とどのつまり、簡単に言ってしまえば「ゲーム制作者が、ゲームプレイヤーに、ゲームをやめろと言っている」ということですから。
ただそんなアンチテーゼから学べる、気づくこともたくさんあると思っています。そんなゲームです。
moonは10月10日にスイッチで配信されます。価格は1980円。やっすい。あらかじめダウンロードも始まっていますので、僕も予約しよ。